安全の世界では有名な「一万人のひとり」の話です。
『〇〇製鉄〇〇工場で、28歳の社員が労働災害で亡くなった。工場のY部長は、弔問に社員宅を訪れた。25歳にして未亡人となった奥さんが、二人の子供をひざにかかえ、泣き腫らした目でうなだれていた。Y部長は、お悔やみの言葉を述べても奥さんから何の反応も返ってきません。
何度訪れてもこの状況はしばらく変わりません。
ある時、「今日も何を言っても駄目だな」と思って席を立ちかけると、今までずーとうつむいていた奥さんが顔をふっとあげて「〇〇工場では何人の方が働いておられますか」と聞いたので、Y部長は「一万人です」と応えると奥さんはさらに言葉をついで言いました。「〇〇工場にとっては主人の死によって一万人の一人を失っただけです。しかし、わが家では・・・私たちは・・・私は・・・人生の全てを失ってしまいました・・・・・」
Y部長は、事業活動するのに、ある程度の労働災害は付き物で起きてもやむおえない・・・こんな気持ちが心の底に少しはあったのですが、この奥さんの言葉を聞いて、一人ひとりはかけがえのない人なのだ、労働災害は決してあってはならないのだ、ゼロでなければならないのだ・・・と心底悟りました。
その後、〇〇工場は安全活動に一段と力を入れ優良事業所に様変わりしました。しかし、若き未亡人がその後どのような人生を歩まれたかは定かではありません・・・』
そうです、労働災害は絶対にゼロにできます。
究極の目標としてゼロ災害、ゼロ疾病、明るくいきいきした職場を実現するために先取りの安全衛生活動をたゆまず推進しましょう。
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